HBR | ソフトウェアはどのような変化を遂げたのか③

2019年3月10日日曜日

ビジネス・経済

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【参照記事】Harvard Business Review:What Will Software Look Like Once Anyone Can Create It?

※英文記事を翻訳しているため、一部日本語が読みづらくなっております。あらかじめご了承ください。

この記事はYouTubeの前副社長でありCoda現CEOであるShishir Mehrotra氏の記事を元にしています。


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"つくる人の時代"とこれから


コンピュータが使われるようになった初期の頃は、ソフトウェアはコンピュータの愛好家によってつくられていました。

Homebrew Computing Club や Steve Jobs、Wozniak や Gatesを考えてみてください。

彼らの中には、コンピュータというこの明るい新技術によって、誰もがつくりたいものを自由に作れるだろうという共通の認識がありました。

しかしその後SAPが登場し、巨大なアプリケーションソフトウェアの企業が誕生しました。

この世代では、一つのITチームが会社全体のために巨大なシステムを購入し、そのシステムがすべての問題を解決するだろうと考えていました。

それから2000年代に、パッケージ化されたアプリが爆発的に普及しました。

ビジネスの世界では、これはSaaS(software-as-a-service、サービスとしてのソフトウェア)と呼ばれています。

利用者が問題を抱えていても、コンサルタントに相談する必要はありませんでした。

Salesforce.com といったサイトにクレジットカードを登録するだけで、多くの解決策の中から必要な一つを買うことができました。

利用者はサイトを通じて、仕事の負担を減らすためにソフトウェアの「スタック(解決策)」を自由に選ぶことができました。

システムに仕事を任せている間に、彼らはApp StoreとPlay Storeにある400万のアプリをスマートフォンやタブレットでスクロールしているではありませんか。

マーク・アンドレッセンの有名な言葉で「ソフトウェアが世界を食べ尽くしている」という表現があります。

アプリの急増に伴い、私たちの仕事やコミュニケーション、交通機関や金融システム、さらには食料生産といった、現代生活のあらゆる側面が変化してきました。

奇妙に感じませんか?

私たちの世界の大部分が、少数のアプリ開発者によって作られているだなんて。

筆者は、ソフトウェアが新しい段階にきていると感じています。

人々は見知らぬ人がつくったソリューションを使いたくないのです。

たとえそれが万能であってもです。

彼らはソリューションを自分で作りたいと思うでしょう。

これを、先ほどのマルクの言葉に例えるなら、「"つくる人が"ソフトウェアを食い尽くしている」といえるでしょう。

過去20~30年間、ソフトウェア産業は大衆に普及するまでに大変苦労しました。

これはインターフェイスのせいだと筆者は考えます。

元AppleのデザイナーであるBret Victor氏は、これは数学と非常によく似ていると指摘します。

計算をするときに、まさかローマ数字(Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ)なんて使いませんよね?

これは信じられないほど、ばかげて難しいです。

同じように、14世紀以前には、掛け算は非常に困難な概念であり、数学のエリートにしか考えられないものでした。

それから、アラビア数字が伝わりました。

そして、我々は7歳にさえなれば上手に掛け算を使えるようになったのです。

掛け算の概念について難しいことは何もありませんでした。

問題は、当時、ローマ数字が扱いづらいユーザーインターフェースを持っていたということでした。

ソフトウェアについてでも同じです。

暗号化APIについて考えてみましょう。

完璧に配置されたセミコロン、 丁寧に順序付けられたコマンドラインパラメータ、等号を用いる3つの方法、わけがわかりませんよね。

まるでローマ数字の難しさがソフトウェアにもあるように感じます。

そう、ソフトウェアには新しいインターフェース、新しい言語が必要です。

この重要性に注目している企業があります。

GlitchやZapier、IFTTTなどの企業はすべて、開発者だけができることを誰でもできるようにしようとしています。

AirTableやQuickbaseなどの企業は、データベースをはるかに幅広いユーザーに提供しています。

私の会社 Coda は、新しいインターフェースは私たちが知っていて、かつ信頼できるものになると考えています。

それは、ドキュメント(文書)です。

"つくる人"は真っ白なキャンバスと使い慣れたマウスのカーソルから始め、アプリと同じくらい強力なドキュメントを創るために、新しいブロックを積み上げていくでしょう。

たとえば、Hopeというパン屋は、バージニア州で小さなグラノーラ会社を経営しています。

Hopeはビジネスのために小売業者との関係を管理する方法についての優れた洞察力を持っていましたが、管理するためのソフトウェアを見つけることができませんでした。

そこで彼女は問題を解決するために一連のドキュメントを作成しました。

適切なブロックがあれば、彼女はソフトウェアの購入者からソフトウェアメーカーに鞍替えすることができたのです。

"つくる人の世代"は何をもたらすのでしょうか?

今日の世界では私たちを、一方でソフトウェアを開発する人々と、他方でソフトウェアを使用する人々とに分けています。

数学に例えると、アラビア数字という良いインターフェースを見つけることで、この格差は解消されると思います。

そして、一日中ソフトウェアを使っている人々は、ついに自分自身で作ることができるようになるでしょう。

その後はどうなるでしょうか?

大規模ではなく、小規模なユーザー向けにアプリの設計を始めます。

企業におけるすべてのチーム、プロジェクト、さらには会議に合わせてカスタマイズされた独自のアプリケーション(何百にも及ぶ)が使われるでしょう。

この世界には、エッジケースのようなものはありません。
エッジケース*:値が限界ぎりぎりなどで、特別な問題を含む可能性がある状況。例えば秒未満を四捨五入して時刻を表示する処理で、入力が23時59分59秒台後半の場合。

これまでサービスを必要としていたチームや個人は、エンジニアに頼む必要がなく、最適なソリューションを手に入れることができるでしょう。

ソフトウェア産業の展望はより広く、そしてより面白くなるでしょうが、その一方で騒々しくもなるでしょう。

どんなに優れたソリューションでも、おそらく100%完璧ではないからです。

そして、今まで予想したことがなかったであろうソフトウェアが大量に生まれる源である、アイデアが爆発的に生まれるでしょう。

このようにして"つくる人の世代"は動いていくのです。

個人的には、筆者は楽しみで仕方ありません。

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